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オールドノリタケの魅力
Charm of Old Noritake
[Photos taken on Apr.19, 2003]

 

2003年4月19日と20日の「陶祖まつり」に合わせて、展覧会「オールドノリタケの美ー
輸出陶磁器隆盛の歴史」が瀬戸市の4ヶ所の展示館で下記の通り始まった。

【展覧会の趣旨】
1904年の日本陶器創立から100年が経とうとする今、近代日本陶磁の見直し機運
が高まっている折、 ”オールドノリタケ”にスポットを当て、当時の近代化・西洋化
の中で果敢に活躍した瀬戸の窯元や絵付職人、デザイナー達の技術の粋を尽くした
”美”の世界を二人の日本を代表するコレクターの作品を中心に紹介する。

”オールドノリタケ”とは明治中期から第二次世界大戦終結に至るまで、1876年
(明治9)に創業した森村組と、1904年(明治37)森村組が愛知郡則武に創立した
日本陶器合名会社(現ノリタケカンパニーリミテッド)が主に米国向けに生産した洋風
陶磁器の総称である。

【展示館】
《2003年4月19日(土)〜6月22日(日)》 
瀬戸市文化センター美術展示ホール(写真参照) 入館料200円
瀬戸市歴史民俗資料館 入館料100円
瀬戸市新世紀工芸館 入館料 無料
《2003年4月19日(土)〜8月31日(日)》
愛知県陶磁資料館  入館料400円

国内のオールドノリタケ収集家である若林経子氏(東京都)と大賀弓子氏(大阪府)の
所蔵品約260点が会場毎にテーマ分けして展示されています。

瀬戸市文化センター美術展示ホール


4月19日午後1時30分〜午後4時の記念講演会「オールドノリタケの魅力」を瀬戸
市文化センターふれあいホール22会議室で聴いた後、同センター別館の展示ホールで
コレクションを見ましたが、美しさと絢爛豪華さには圧倒されました。

座談会


【講演会の講師】
川口祐司 <潟mリタケアーティストクラブ>
井谷善恵 <オックスフォード大学・オリエント研究所>
若林経子 <オールドノリタケ研究家>
大賀弓子 <オールドノリタケ研究家>

【講師の講演要旨】
川口祐司氏:
1883年(明治16)ニューヨークの卸売業モリムラブラザーズはコーヒーカップの製造を
瀬戸の川本枡吉に依頼(日本で初めて生産するコーヒーカップ)。
モリムラブラザーズのデザイナーは教会に出入りする婦人の服装などからヒントを得、
スケッチを描き、日本へそのスケッチを送り、日本ではスケッチをオールドノリタケに
忠実に反映させ、作品を輸出した。この作品は米国民を魅了した。
このような生産方式は現在も受け継がれている。
1920年代の世界不況の折り、華やかな物を望む風潮の中、アールデコは生れたが、
この時期、アルミ、プラスティック等の新素材やラスター彩の釉薬も生れた。
新作品が出来ても市場に出すにはなお、かなりの歳月がかかる。理由は完全な物を
再現出来る確証が必要な為
。(下線部はウェブページ作成者の解釈)

井谷善惠氏: 
1880年頃は食器棚は獣の装飾等、男性中心であったが、男女の関係(Gender)が変化し
女性好みのダイニングが主流になり食文化も繊細になるにつれ、オールドノリタケは売上を
伸ばした。(その後、ピクニック、バーベキューが流行るにつれ、美しくも繊細なセラミックは
流行らなくなってきた。)
ヨーロッパではバラと言えば植物学上のローズピンク色のブッシュガーデンローズであり、
明治以後の日本もこれにならった。これに対し、森村組の石田佐太郎は黄色のバラを
モチーフとして描いた。(日本には、古くは”春日権現絵巻”や1543年の高野山の装飾品
に既に黄色のバラがあった)その後、ヨーロッパでも、植物学者が黄色のバラを紹介し、
一般人の間でも一般的になった。
1897年の日本から米国への輸出荷物送り状(インボイス)品目7,143件中、陶磁器は
4,692件。1905年(明治38)には3,389品目中、2,681品目が陶磁器(当時の英語
は陶器のことを”土焼き”、磁器のことを”石焼”としていた)。
1970年シアトルのコトラー氏がオールドノリタケに注目し、「転写、ラスター彩、釉薬」の
研究でオハイオ州立大学で博士号を取得。
陶磁器に「光が当たっている」感じを出すためにマイセンやロイヤルコペンハーゲンでは、
素地に白色の絵具を重ねる→素地が厚くなる→全体にバランスに欠ける。これに対し、
オールドノリタケでは、 白抜き→光が当たった感じにする→素地が厚くならない。
井谷善惠氏はオックスフォード大学で「 明治時代における瀬戸輸出陶磁器」と題する
博士論文提出中。博士論文は、日本の国会図書館でも閲覧可能となります。

若林経子氏:
オールドノリタケとの出会いは、少女の頃、名古屋にある実家の蔵で見た「コバルト金彩
ティーセット」。 その後、裏印からこのティーセットが明治41年頃、英国輸出用に製造された
オールドノリタケであると知り、亡き夫と共に十数年、オールドノリタケを収集してきた。
ヨーロッパにはウェストウェッジフッドに同様な金彩や金点盛りの作品があるが、「おこしもん」
を作るような製法である。 これに対し、オールドノリタケは全て、手で描き、作成しており、
技術に心がこもっている。 2002年10月に東京のホテルオークラにある私設美術館
「大倉収古館」と合同してオールドノリタケ展示を行った。 大倉収古館からは江戸時代の
能衣装を、若林氏からは明治時代のオールドノリタケを提供し並べて展示したところ、
各展示品は全く違和感がなく、非常に調和していた。 
「全国の美術館でオールドノリタケ展を開催してその美しさや先人達の技や情熱を
知っていただきたい」という永年の夢が叶いつつあることを嬉しく思っています。


大賀弓子氏:
オールドノリタケの収集は米国のメリーランド州のアンティークモールの洋食器棚に置いて
あった6角形の金盛りの鉢を見てから始まった。 紫とコバルト色が混じった透明感のある
色やぼかしを掛けた色など繊細な美しさに魅了され、その鉢の裏印を見たら、日本とメープル
リーフのラインが描かれていた。 早速、図書館で調べたら1891年モリムラブラザーズ製で
ある事がわかった。一時帰国して、友人から貰った「オールドノリタケ」の本を見て、確証できた
時は明治時代の日本にこんなすばらしい芸術作品とも言える陶磁器を製作して輸出して
いる会社があることにも感動した。明治時代の日本人の美意識や着物の友禅のぼかしにも
似た技法を採り入れるその表現の豊かさや完成度の高さには圧倒された。